【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「あれ?灰野真っ赤じゃん。どうしたの?」
遅れてやってきた山本君が、灰野くんの背中を叩いた。
「あ、藍田さんだ。えーなになになに。なにがあったの?」
にやにやと山本君は灰野くんを小突いている。
もう、やめて……。恥ずかしい……。
「なにもねーよ!」
灰野くんの人差し指が、エレベーターの▲ボタンを連打する。
あ、そうだ。
鍵、二人に渡すためにこんなに急いでいたのに。早く追いかけなくちゃ。
慌てる必要もなく、チーンと音を立てて到着したエレベーターに彗とリホちゃんが載っていた。
「あー胡桃ぃ、ちょうどよかった!鍵、胡桃が持ってたでしょ……って何、灰野真っ赤だけど?」
「ほっといて」
「あれ?胡桃も赤くない?」
「……ほっといて」
両手で頬を抑えながらみんなと一緒にエレベーターに乗りこんだ。
「このあと一時間自習だよな。終わったら女子、俺たちの部屋来ない?」
ナギちゃんの一声でそういうことになって、あたしはひとりそっぽを向いている灰野くんに目を向ける。
「いいの?」
「いいよなー山本」
「うんうん、トランプとウノしかないけどやろうよ!伊吹もいいだろ?」
「好きにしろよ」
え……いいの?
あたしが行って嫌じゃないのかな。
灰野くんは優しいし、空気を壊したりしないから、合わせたのかなぁ。