【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

「これで山本君のは全部入ったよ。こっちに置いておくね」


重たいリュックを持ち上げて部屋の片隅に置くと、反対の片隅で灰野くんがきょろきょろと何かを探しているのが見えた。


畳にへばりついて、目を凝らしてテーブルの下を覗いている。



―――シロクマは、山本君が持ってるよ。


そう言っていいのか、だめなのか。
それは全然わからないけど。


必死になって探す灰野くんが、藤堂花さんを想っていることだけはわかるよ……。


「あの、山本君……灰野くんが困ってる」


山本君の肩を叩いてから、辺りを見回している灰野くんの後ろ姿を指さした。


「え?……あぁー、うん……。りょうかい」



申し訳なさそうな笑みをあたしに向けて、山本君は灰野くんにシロクマを手渡した。


ホッとしたように笑う灰野くんの自然体に、胸が苦しくなる。



「部屋片付いたしトランプしようぜー」


パッとナギちゃんが視界を遮った。


「何やるの?」


彗がカードを切りながらみんなに目を配る。


「シンプルにババ抜き」


ナギちゃんの一言で決定した。


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