【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
顔が熱いのはわかってる。だけど目をそらすわけにはいかない。
だってこんなの一秒でも見逃せないよ。
灰野くんが、りんごみたい。
熱烈的視線に気づいた彼は、「え?」と目を丸くする。
「何?あんま見ないで」
あぁ。
あっち向いちゃった。
いつもみたいに壁をつくられた。
だけど彗にカードを向ける灰野くんの頬がまだ赤く染まっている。
それにドキドキと過剰に反応するあたしの心臓は自惚れ屋なの?
あたしは、追従するように頬を上気させる。
「かぁー」といたたまれなくなったような声で叫んだ山本君が、扇状に広げたトランプで顔を隠した。
「青春はほどほどにー」
ナギちゃんのいたずらっぽい声に彗もリホちゃんも乗っかった。
「私も恋したーい」
「わたしは彼氏に会いたくなった」
「ちょっとふたりとも!」
やめて!、とあたしは小声で叫ぶ。
そんなこと言われたらあたしの片思いが、灰野くんにばれちゃうから……!
おそるおそる横目で見た灰野くんはもうポーカーフェイスで、「次山本だよ」と急かしている。
灰野くんは、昔から結構鈍感だと思う。