【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

「俺だけを見てくれる子」


最後はすらすらと灰野くんは答えた。


灰野くんだけを見るってそんな簡単なこと?


それってあたしの得意分野。


三つめだけは、クリアできる自信がある。


ぱあっと明るい気持ちになって畳から顔を上げると、灰野くんがこっちをじぃっと見ていた。


え、っとひるんだあたしに、灰野くんはほんのわずかに口角を上げて目線を下げる。


「こんなんでいい?」


「は、はい。ありがとう」


普通の会話でさえギスギスするあたしたちをリホちゃんがにっこりと見ている。


……えっと、何?


リホちゃんの手招きに身を乗り出して耳を寄せる。


「この合宿中に、手つなぐくらいは進展しなよ。エスキョク」


S極。は、はい先輩。



「次何やる?」


ナギちゃんがカードを切りながら言うと、

「はいはーい」とリホちゃんがまっすぐ手をあげた。


「肝試しに行こーよ。合宿のだいご味」


「いいねぇ、行く人ー?」


はーい、と全員参加。
灰野くんだけ遅れて手を上げていたけど、参加!


男女ペアで森の道をぐるっと一周するらしい。

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