【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「おいおい灰野ー何やらかした?」


スタンスタンとナギちゃんの足音が近づいてくる。


ナギちゃんの手が頭に乗って。


「胡桃?」


と首を傾けながらあたしの顔を覗き込む。


ナギちゃんの茶色い目が、すぐそば。


「あ、泣いてない」


よかったってナギちゃんは、ふにゃっと笑う。


「ナギちゃん、ちょっと近いよ……」


あたしは顔を背けてナギちゃんの胸を両手で押す。トン、と距離をあけたかたい胸板。


「ごめんごめん。灰野が泣かせたのかと思って」


「そんなわけないよ!」


ぶんぶんと頭を横に振っているのは、灰野くんがあたしとナギちゃんのやり取りを、眉間に皺を寄せて見ているから。


そりゃ人を泣かせたなんて言われたら怒るに決まってる。


ナギちゃんこれ以上灰野くんの機嫌損ねないでよ……。

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