【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

「藍田さん」


灰野くんの声にビクッとした。

「は……はい」


「た……。楽しく……行きましょう」


……へ?

歩き始めた灰野くんの背中。少し間をおいて、はっとして追いかける。



「ぶはっ、何今の!いってらっしゃい!!」


彗がお腹を抱えて笑っている。
いや、彗だけじゃなくてみんな肩が震えている。



あたしもつられて口角が上がり始めた時。


「……はぁ」


灰野くんの方から聞こえた二度目の溜息に、浮かびかけた笑みがしゅっと口の中に戻る。


しぃんと静まり返った暗い道。まだ建物から差し込む光が淡く道を照らしている。


蛙や虫の声がそこらじゅうから聞こえる。さく、さく、雑草を踏む音も。


何を話そう。
考えても考えてもゴメン以外出てこない。

だけどこれ以上謝ったら、逆に気分悪いよね。


しぃん。再び静けさが広がる。そんな時。
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