【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
消えろ過去の自分
灰野伊吹 SIDE*
◇
星を見上げて、歩き始めて数分。
藍田さんは何も喋らない。それどころか心ここにあらずだ。
そりゃそっか。
だって全然会話できてないんだから。
”あたしが話しかけるから大丈夫だもん!”
なんて、叫ばせるほどうまくやれない俺は、ナギの言う通り間が持たなくなっていた。
俺を見る目が熱いものだったのは、誘ってくれた最初だけ。
……藍田さん暇なんだろうな。
こんな男に、愛想尽きない方が異常だって。
なんで俺なんか誘うんだよ。ナギの方が絶対楽しかったよ。
藍田さんに目を向ける。
銀色の月と星がつくる薄い闇で、ただぼうっと俺の横を歩く彼女。
今、何考えているんだろう。
無言、続きすぎじゃね?
気まず……。