【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「ここってそんな怖い?」
肝試しにしては雰囲気の足りないただの森だけど。
「うん」
「泣くほど?」
「もう泣いてないよ」
普通に、涙声だけどな。
そんな心細そうな声と、不安そうな涙っぽい顔。
なんで俺にみせんの。
そっち見れない。
心臓がうるさい……落ち着けよいい加減。
「藍田さん……そんな怖いなら、手繋ぐ?」
絞り出した声で、右手を藍田さんの方へ伸ばす。
空っぽの手のひらを、藍田さんとの間でひらいた。
「……」
溜息みたいな、ことばみたいな何かが聞こえて。
ふわっと藍田さんの暖かい手が俺の手を掴んだ。
ドクン、っと一気に心拍が強まる。
あの時みたいに、ダサいままじゃない。
手のひとつも繋げなかったあの頃の自分なんて消えてしまえ。