月夜に花が咲く頃に
「まあそんなことになれば、鬼灯組も堂々と俺らを潰せるし、そいつらと繋がってる紫樂はめでたくここら全域を牛耳るトップになれるしな」


「・・・・・・気にくわねえ」


紅雅はそれだけ言って、目の前にあるコーヒーに口を付けた。


いつも穏やかな表情の楓も、あっけらかんと笑っている光も、眉間にしわを寄せて厳しい表情のまま動かない。


3人の様子をキッチンから静かに見ていると、紅雅と一瞬だけ目が合い、座れと無言で指示されたのでお茶を飲み干してから紅雅の隣に座った。


「とにかく、強くなるしかねえ」


紅雅がぽつりと呟く。


「俺はここを守るだけだ。潰させねえ」


その声は小さかったけど、力強くて。


やっぱりこいつは、トップの人間なんだと思わざるをえなかった。


楓も光も、その言葉に少しだけ笑う。


「まったく。これだからうちの総長は頼りになるよ」


「我らが総長がそう言ってんだから、それ以外の選択肢ねえよな」


さっきまで息苦しかった部屋が、明るさを取り戻していく。


「さて、じゃあ俺は下の奴らの喧嘩相手でもしてくるかー!」


「俺は紫樂と鬼灯組の情報をもう少し集めてみるよ」


そう言って2人は幹部室から出ていった。


どんなに逆境でも、紅雅は立ち止まることはない。


それに、暁の奴らも信用してついていく。


迷うことなく、ためらうことなく。


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