月夜に花が咲く頃に
今日の夜も、繁華街へ見回りに行く。


今日は私と光と、あと4、5人の暁の人たちと一緒だ。


紅雅と楓は倉庫に誰かが攻めてきても対応できるようにお留守番。


倉庫から出てくる前に、いい子でお留守番しててね、とふざけて言ったら、楓は冗談だと分かって笑ってくれたのに、紅雅は不機嫌顔で睨んできた。


冗談が通じない奴め。


「おい雫、今日はどこら辺行く?」


「んー、昨日は東側だったんでしょ?じゃあ南側行こう」


「はいよー」


何も異常がないか確認しながら、光溢れるネオン街を歩く。


ふと、煙草の匂いが鼻をかすめる。


思わず顔をしかめた。


煙草の匂いは、どんなに嗅いでも慣れない。


どうしても、好きになれない。


子供の頃、まだ幼かった頃、思い出しちゃうからなのかな。


『お前は本当に弱いな』


そう言って、小さい私を上から押さえつけるような鋭い視線で、蔑んでくる。


ただ何も言えずに俯く私は、その人の顔なんて見れなくて。


煙草のきつい匂いに、むせかえっていた。


その人と離れてからも、煙草の匂いがしたらすぐそばにその人がいるんじゃないかって、ビクビクしてたなあ。


・・・・・・そういえば、あの人は今何をしているんだろうか。


相も変わらず、難しそうな顔で仕事を続けてるんだろうな。


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