月夜に花が咲く頃に
あのときは一瞬でよく分からなかったけど、今見ればその顔は見覚えのある顔。


「小田巻・・・・・・」


「あれ、俺のこと知ってたんだ?嬉しいなー」


紫樂の総長。


こいつが私をここまで連れてきたのか。


「どうして私を連れてきたの」


近づいてくる小田巻を警戒しながら、問いかける。


小田巻はベッドの縁に座って、私を見つめた。


「あいつらの大事なもんを奪いたかったから」


その手が私の頬を静かになでる。


ぞくっ、と寒気がした。


「・・・・・・触らないで」


その手を振り払うことも出来ず、小田巻をギロリと睨みつける。


小田巻は怖い怖い、と言うけど、その手はそのまま私の頬をなで続けた。


「これがあいつらが必死に守ってるもん、ねえ。まあ確かに綺麗な顔してるけど、女ごときであいつらが乱れるなんて、思わなかったなあ」


「どういうこと、」


「お前が俺の手に落ちてから、どうなったと思う?」


校閲の笑みを浮かべる小田巻の顔に、背筋が寒くなった。


「あそこにいた全員、気が狂ったように暴れて統率なんてまったくとれず、紫樂と鬼灯にやられて病院送り」


頭が、重い鈍器で殴られたような感覚。


何も言えないまま、頭の中だけが騒がしい。


やられた・・・・・・?


病院送り・・・・・・?


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