月夜に花が咲く頃に
あの場にいた、全員・・・・・・。


「ひ、かる、も・・・・・・?」


声が、震える。


目の前の男は、私のそんな様子がよほどおかしかったのか、声を上げて笑った。


「どんだけあいつらのこと信用してたの?あははっ、ほんと笑える。いくら強くたって、本物のヤクザに高校生のガキが勝てるわけないだろ」


小田巻は楽しそうにしゃべり続けるけど、それ以上は何も頭に入ってこなかった。


どれくらい大きな怪我をしたの?


意識はあるの?


ナイフで刺された?


それとも頭を殴られた?


消えちゃうなんてこと、ないよね――――?


「・・・・・・ほんとに傑作だったぜあいつらの悔しそうな顔!」


「黙れ」


これ以上しゃべるなと、怒りを含ませて呟く。


小田巻はそれまでせわしなく動かしていた口を止めて、怪訝そうに私を見た。


「真っ正面から向かっても来れない、お前みたいな卑怯者が、あいつらを笑うな」


小田巻の肩がピクリと揺れる。


でもそれは一瞬で、また顔に笑みを貼り付けた。


「うるせえな。勝てれば俺はそれでいいんだよ」


その言葉と同時に私の頬に小田巻の拳が落ちてくる。


こんな体勢で避けられるはずもなく、その直後に頬に鈍い痛みを覚えた。


< 114 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop