月夜に花が咲く頃に
「じゃあ、もうしばらくここで大人しくしててな。紫樂の奴見張りつけとくから、なんかあればそいつに言え」


小田巻は立ち上がって、ドアの向こうへと姿を消した。


殴られた頬が熱を帯びて、じんじんとうずく。


あー、痛い。


なんだか口の中も血の味がするし、最悪だ。


結構思いっきり殴ったなあいつ・・・・・・。


頬の痛さに顔をしかめていると、またドアが静かに開いた。


「・・・・・・?」


首を横に動かすと、そこには一人の男。


私を一度だけチラリと見て、何も言わずに部屋の隅にある椅子に座った。


「あんたは、誰」


警戒しつつ声をかけると、男は少しだけ顔を上げて私を見た。


「・・・・・・見張りだ。何かあったら俺に言え」


「じゃあ、とりあえずこの縄解いてくれない?いい加減痛いんだけど」


「それは無理だ」


「少し緩めるだけでも・・・・・・」


「だめだ」


ちぇ、ケチ。


それにしても、ずいぶんおとなしめな奴だな。


こいつも紫樂の仲間なのか。


することがなくてじっとそいつを観察していると、その視線に気づいたのか椅子から立ち上がって近づいてきた。


「何か用か」


「いや、別に用とかじゃないけど・・・・・・。することないし、少し話さない?」


ね、と提案すると、その男は呆れたようにため息をついた。


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