月夜に花が咲く頃に
「のんきな女だな。アホなのか?」


「え、急に毒舌。傷つくんだけど」


そういいつつも、そいつはベッドのそばまで椅子を持ってきて、そこに座った。


「名前、なんていうの?」


「言う必要ねえだろ」


「えー、じゃあ適当に名前付けちゃうよ?太郎とか?」


「・・・・・・奈桐(なきり)だ」


「それ名字でしょ」


「いいだろ別に」


奈桐は無愛想にそっぽを向く。


「奈桐はさ、紫樂にいつから入ってるの?」


「2年前くらいから」


「へえ。けっこう長いんだね」


素っ気ないけど、質問には答えてくれる。


優しいんだか、優しくないんだか。


不器用なやりとりに、思わず笑ってしまう。


「小田巻とは、仲いいの?」


「湊さんは、俺の憧れだから」


小田巻のことを聞くと、奈桐は力強く答えたけど、すぐに顔を曇らせた。


「小田巻が憧れ、かあ。私からしたら、あんまり尊敬できるような人には見えないけど」


乱暴だし、卑怯だし。


そう付け加えると、奈桐は私を鋭く睨んだ。


「湊さんだって、ほんとはあんな人じゃない。何も知らないくせに、適当なこと言うな」


何も知らないくせに、と言われても。


実際知らないし、今の最悪なあいつの印象しか私にはないからな。


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