月夜に花が咲く頃に
「昔は、湊さんだってあんなんじゃなかった。仲間思いで、正義感があって、ちょっと頼りないけど優しい人だったんだ。だけど・・・・・・」


奈桐は苦しそうに口をつぐむ。


何も言わずにじっと見ていると、奈桐は再び話し始めた。


「だけど、湊さんが総長になってから、それが気にくわない奴らが出てきて・・・・・・。そのすぐ後に起こった抗争で、そいつらが敵のチームと繋がってて、紫樂はボコボコにされたんだ。その後から、湊さんは仲間は信じるもんじゃねえ、従えるもんだって。薬に手を出したり、ヤクザと手を組んだり・・・・・・。とにかく、勝つことしか考えなくなっちまった」


奈桐は力なくうなだれる。


こいつは、ずっと小田巻を見てきたんだろう。


だからこそ、憧れて、だけど小田巻が変わってしまって、どうすればいいか分からなくなって、迷って。


それでも、小田巻の力になろうと、ずっと小田巻を支え続けてきたんだろうか。


まったく、どいつもこいつも不器用な奴らだ。


「知ったこっちゃないよ、そんなこと」


盛大にため息をついて言うと、奈桐は腑抜けた顔で私を見た。


「過去に何があったとか、昔はどうだとか、興味ないって言ってんの。今あいつがやってることは、何があろうと許せるようなことじゃないし」


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