月夜に花が咲く頃に
奈桐はまたうなだれて力なく呟いた。


「・・・・・・そうだよな。お前に何話したって、」


「あのバカをどうにかできんのは、お前だけだろ」


「・・・・・・え?」


私の言葉に、奈桐は首をかしげる。


ああもう、ここまで言っても分かんねえのかこいつは。


「だーかーらー、あんたはずっとあいつのこと見てきたんだろ?ずっとついてきたんだろ?だったら、お前があいつを変えろって言ってんの!」


「俺が、変える・・・・・・?そんなの、無理に決まってる。俺なんかが・・・・・・」


あー、まったく、じれったい。


「あんたが小田巻を信じてるなら、できるよ」


うじうじする奈桐に少しいらついて、強くそう言うと、奈桐の目が少しだけ生気を取り戻したような気がした。


・・・・・・また自分から変なことに首つっこんだ気がする。


やっちゃった、と思ってため息をつくけど、奈桐の表情を見てたらまあいいか、と思ってしまった。


「・・・・・・で、これ、解いてくんない?」


「それは・・・・・・ダメだ」


何でさ!?


くそ、今の雰囲気なら流れで解いてくれるかも、とか思ったのに。


むすっとして奈桐を見ると、奈桐はごめん、と手を合わせてきた。


この野郎、そんなんで許されると思うなよ。


すっかり和んでしまった空気。


でも、そんなの長く続くはずがなくて。


外から何やらうるさいバイクの音が聞こえたと思ったら、ドアの向こうでガシャンッ、と大きな音がした。


「雫!どこだ!」


もうすっかり聞き慣れてしまった、低く通る声が耳に届く。


紅雅・・・・・・?


「暁、来たみたいだな」


奈桐が呟く。


ドアが、勢いよく開いた。





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