月夜に花が咲く頃に

紅雅は私を見るなり一瞬安心したような顔をした。


けど、その顔はすぐに鬼の形相に変わって、ずかずかとこちらに向かってくる。


そして私の近くにいた奈桐を思いっきり殴り飛ばした。


奈桐は遠くまで吹っ飛ばされ、壁に背中を強く打ち付ける。


ああ、痛そう・・・・・・。


紅雅はベッドに縛り付けられた私を見て、またほっとしたような顔で息を吐いた。


「今解く」


紅雅はしゃがんで、私の腕を縛る縄に手をかける。


解く間顔の近くにあった紅雅の肩が、激しく上下に揺れていて。


心配、かけてしまった。


なんだか申し訳なくなって、俯いてしまう。


ふと腕が軽くなって、縄がほどけたことに気づく。


身体を起こして紅雅にお礼を言おうと顔を上げると、途端に強く抱きしめられた。


「くう、が?」


「うるせえ、黙れ」


紅雅はそれだけ言って、離そうとしない。


紅雅の身体が微かに震えているのを感じて、また申し訳なくなって苦しくなる。


足手まといにならないようにって、約束したのに。


こんなにも、心配をかけてしまった。


迷惑をかけてしまった。


ほんとに、私は使えない奴だ。


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