月夜に花が咲く頃に
「楓、中の奴らは」


「ああ、全員片付けたよ。人数増やすために鬼灯の奴らが少し混ざってたけど、ほとんど紫樂だった。鬼灯の主要メンバーは一人もいなかったよ」


「そうか」


紅雅と楓が何か話してるけど、疲れてるのか、頭に入ってこない。


視界が歪んだ気がして、目をこすった。


「雫ちゃん?大丈夫?」


「うん、大丈夫。それより、光とか、病院送りになった人たちは?」


「大丈夫だよ。みんな軽傷で済んで、ピンピンしてる。明日一緒にお見舞いに行こう」


楓の言葉に、ほっと胸をなで下ろす。


そっか、みんな、大丈夫なんだ・・・・・・。


それを確認した瞬間、緊張の糸が切れたのか、ぐらりと視界が揺れて足がもつれる。


紅雅が支えてくれたおかげで、なんとか倒れずにすんだ。


「あ、ごめん。ちょっと力が抜けちゃって」


「・・・・・・帰るぞ」


紅雅はそのまま私を抱き上げて、バイクまで運んでいく。


ちょ、自分で歩けるのに!


紅雅になされるがまま、紅雅のバイクの後ろに座り、ヘルメットを被る。


「捕まれるか?」


そう聞いてくる紅雅の声は、優しくて。


素直に、こくりと頷いて紅雅の腰に手を回した。


それを確認して、バイクは走り出す。


頬を切る風は冷たいのに、紅雅の背中は温かくて。


なんだか安心して、その背中に身体を預けた。





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