月夜に花が咲く頃に
「っていうかそうだよ!雫ちゃん、治療しなきゃ!」


明原は思い出したようにまた部屋を勢いよく飛び出し、そして数秒で戻ってきた。


その手には救急箱。


あっという間に慣れた手つきで治療してくれた。


「よし、完璧!」


「あ、ありがと」


意外に器用なんだなあ。


明原は治療し終わった私の腕を見て、安心したように目を細めて笑った。


「じゃあ、治療もしてもらったし、帰ろうかな」


そう言って立ち上がると、明原がふてくされたような声を上げる。


「えー、せっかく来たんだし、ゆっくりしていけよー」


「何言ってんの。本来私みたいなの、こんなところに来ちゃいけないでしょうが」


大体治療するからってなんで溜まり場まで連れてくる必要があったんだか。


「いいんだよー、雫ちゃんは。何しろうちの総ちょ・・・・・・」


「光。それ以上言ったら紅雅に殺されるぞ」


「あ、ごめん」


何か言いかけた明原が、やべっ、と口を大げさに手で塞いだ。


「え、何?」


「まあ、京極さんもせっかく来たんだし、ゆっくりしていきなよ。今お茶でも入れてくるからさ」


はい?


「いやいらないいらない!翼も心配してるだろうし、私もう帰るよ」


「そんなん明日説明すりゃいーじゃん。なあ?楓」







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