月夜に花が咲く頃に
翼はずいぶん浮かれてるみたいで、いつもよりも寛容になってるようだ。


どことなく腑に落ちない感じはしたけど、翼も笑ってるし、怒るのもなんだかバカらしい。


よし、思いっきり楽しもう!


翼に手を引かれて、海に向かってかけだした。





水着に着替えて、押し寄せてくる波に少しだけ足をつける。


思いのほか冷たくて、ひんやりして気持ちいい。


翼はすでにお腹くらいまで海に浸かっていた。


「雫!早くおいでー!」


「ちょ、ちょっと待って!」


そういえば私、海って初めてだ。


私って泳げるのかな・・・・・・?


今更そんなことで悩んで、なかなか海に入ることが出来ない。


そんな私の背中を、誰かが勢いよく押した。


「ひゃああ!!!」


勢いよく顔から海にドボン。


鼻とか口から勢いよく水が入ってきて、水の中であわあわと手足をばたつかせる。


やばい、息できない。


思わず死を予感した私の身体を、誰かの腕が勢いよく抱き上げた。


「うっ、げほ、げほっ、はぁっ、」


途端に酸素が体中に入ってくる。


「おいおい、大丈夫かー?」


咳き込む私を心配そうに、光がのぞき込んだ。


「雫!大丈夫?」


翼も慌ててこっちに駆け寄ってくる。


楓はスパン、と光の頭をはたいた。


「光がいきなり押したからだろ。雫ちゃん、大丈夫?」


犯人お前かい。


涙が滲む目で光を睨むと、光は朗らかに笑った。


「悪い悪い。まさかこんな浅瀬で溺れると思わなかったからよ」


「あんた、雫に何すんのよ!」


「ごめんってー」


翼にも怒られながらも、光は楽しそうだ。


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