月夜に花が咲く頃に
ん?紅雅は?


紅雅の姿が見えなくて、キョロキョロと周りを見ると、紅雅はパラソルの下で寝ていた。


「てかよー、雫って泳げねえのか?」


「海とか、初めて来たから・・・・・・。自分が泳げるかどうかも分かんない」


「マジ?」


こくりと頷くと、光はにやっと笑って、私を抱き上げたまま沖の方へどんどん進んでいった。


「ちょっと光!?怖い怖い!」


「大丈夫だって。俺にしがみついてろ」


浜の方に戻ってほしいのに、なんでどんどん深い方に行くの!?


光から抱き上げられてるのにもかかわらず、私の身体はもうお腹あたりまで海の中で。


これ、もう私の足つかないところまで来てない?


・・・・・・怖い。


ここで離されたら絶対に溺れる!


そう思って、ほぼ反射的に光にしがみついた。


「ほら、一緒だったら怖くねえだろ?」


「いや、怖いからしがみついてんだけど」


「はは、確かに」


はは、じゃないんだけど。


何考えてんだこいつ。


「ねえ、もう戻ろうよ」


「んー、もうちょい」


光はなかなか戻ろうとはしない。


少しだけ慣れてきて、光から身体を離して光の顔を見ると、光はなんだよ、と見つめ返してきた。


「光、どうしたの?」


なんか、ふてくされてる?


光の答えを待っていると、光は突然私を抱き上げていた手を離した。


「わっ、」


と思ったら、それは一瞬だけで、気づけばまたすぐに私は光に抱き上げられた。


「もう!なんなの!」


びっくりと震えが混ざった声で光に怒ると、光はいつになく真剣な目で見つめてから、私を抱きしめた。


「この首のやつ、誰からつけられた?」


光の息が、首にかかる。


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