月夜に花が咲く頃に
「っ、はっ、はぁ、」



息苦しくて、目を開けたら、目の前には見慣れない天井で。


ああ、そうか。


海に、遊びに来てたんだっけ。


ここは、旅館、?



乱れた息を整えながら、さっきまでの出来事が全部夢だったことに気づく。



嫌な夢、見ちゃったな。



静かに身体を起こすと、隣には紅雅が寝息を立てて気持ちよさそうに眠っていて。


周りを見渡せば、他の三人も熟睡中のようだった。



なんか、一気に目が覚めちゃったな。


少し、散歩でもしよう。



みんなを起こさないようにそっと外に出る。


夏の夜は、少し蒸し暑くて、でも、静かで心地よくて。


砂浜に足跡を付けながら、海沿いを歩く。



昼間はあんなに人がいっぱいで、騒がしかったのに。


時間帯が違うだけで、こんなに雰囲気って変わるものなんだな。


波の音だけが、押し寄せては、引いていく。


夜の海は、なんだか黒くて、大きくて、飲み込まれてしまいそう。


一歩でも足を踏み込んでしまえば、もう戻れない。


そんな気がして、少し怖いと思った。





「雫」



不意に手を引かれて、背中に暖かさを感じた。



「・・・・・・紅雅?」



紅雅は、何も言わない。


私の名前を一回だけ呼んで、私を強く抱きしめて、そのまま、動かなかった。


腕が、震えてる気がして、紅雅の方を見ようとするけど、紅雅がそれを許さない。



「どうしたの?」



仕方がないのでそのまま紅雅に尋ねると、紅雅は少し間を開けてから、口を開いた。


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