月夜に花が咲く頃に
ドサッと音を立てて背中から砂浜に倒れる。


背中に鈍い痛みが走った。


仰向けに倒れたのに、夜空とか、月とか、星は見えなくて。


視界いっぱいに、紅雅の顔。


「く、うが?」


なんで、そんな辛そうな顔してるんだろう。


なんで、今にも泣き出しそうな顔してるんだろう。


紅雅は、私の両腕を掴んだまま、離さない。


両手を押さえつけられて、私は何も出来ないまま。




「・・・・・・んで、なんで何も言わねえ」



痛い。



痛いよ紅雅。



「てめえは、なんでいっつもそうやって自分一人で何か抱えて、隠して」



紅雅に掴まれてる手が。



「なんでもねえってふりして笑って」



紅雅の放つ言葉が。



「俺が一人にしねえって言ってんのに、てめえは、」



紅雅の言葉を聞く耳が。



「一線引いて近づいてこねえ」



紅雅の言葉に、破れそうなほどうるさい心が。



「なんで意地でも頼らねえ・・・・・・!」



全部、全部。



痛くて、たまらないんだよ。




「・・・・・・紅雅」



紅雅の名前を呼ぶけど、紅雅は何も言わない。



ごめんね。紅雅。



私、多分自分でも分かってた。



あんた達と関わるようになってから、今日見たような夢を、よく見るようになったの。



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