月夜に花が咲く頃に
次の瞬間感じたのは、殴られたときの鈍い痛みなんかじゃなくて、どこまでも優しく包まれてるみたいな感覚で。



紅雅にまた抱きしめられてるのを感じて、目を開けた。



だから、こういうのが。



こういうことされる方が、痛いのに・・・・・・!



「必要だ」



「何がよっ、離して、」



「お前は、俺らが必要だ」



「っ、勝手に、決めないでよ!必要ないって言ってるじゃんかっ、」



何を言っても、どんなに突き放そうとしても、どこまでも優しく、どこまでも離してくれないこの男に、いい加減めまいがする。



混乱して、声を荒げて、バカみたいに。



紅雅の腕の中で暴れるけど、紅雅は離してくれなくて。



私を抱きしめたまま、私の顔を上に向かせる。



「そんな泣きそうな顔で言われたって、説得力ねえぞ」



バカだな、と紅雅が笑う。



バカなのはそっちだ。



私が、泣きそうな顔なんてしてるわけがないんだ。



なのに、どうして・・・・・・。



紅雅の指が私の目元を拭う。



途端に、ぽろぽろと私の目から滴がこぼれだした。



「や、なんでっ、」



「雫」



こんな顔、見られたくない。



顔を隠したくて手で顔を覆うけど、紅雅はそれを許してはくれなかった。



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