月夜に花が咲く頃に
「お前の過去のこととか、何に怯えてんのかとか、お前が今背負ってるものとか、俺は知らねえよ。今はな。お前から、何も聞いてねえから」



「・・・・・・そうだよ、紅雅には、関係ないからっ、」



「だが関係ねえとは言ってねえ」



「・・・・・・っは、?」



突き放されたと思った言葉のすぐ後に、訳の分からないことを言われて頭が混乱する。



紅雅はそんな私の顔を見てまた優しく笑った。



「どんなに時間がかかっても、俺はお前が俺を信用するまで離れねえし、離さねえ。お前が俺を、暁を信用して、いつか自分のことを話してくれるようになるまで、嫌って言っても離さねえ。何言われようと、お前の隣にいる」



「っ、そんなこと、信じるわけ、」



「無理して信じる必要なんてねえよ。そもそも信頼なんて、そんな簡単に得られるもんでもねえしな」



この男は、何を言っているんだろう。



「お前が俺を信用してなくても、俺はお前を信用してる。んで、俺はお前が信じようと信じまいと何があろうと死ぬまで一緒にいる」



なんて、バカなことを言ってるんだろう。



自分を信じないって言ってるやつを、信用する?



ほんとに、バカじゃないの。



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