月夜に花が咲く頃に
「じゃあ、家に帰りましょう。晩ご飯もう出来てるわよ。あ、そうだ、よかったら、市原君も一緒に食べましょうよ。お礼もしたいわ」


「え、いや、そんな大したことしてねえし・・・・・・」


「ヒロ兄、来てくれないの?」


「え、」


「隣にいてくれるって、言ったのに」


「いや、それは・・・・・・」


「あらあら、雫ってばすっかり市原君に懐いちゃって。お母さん寂しいわあ。雫にも彼氏が出来ちゃう?」


「ち、ちがっ、そんなんじゃないってば!」


「まったく、お母さんは気が早いなあ。雫がお嫁になんて、そんなのまだまだ先じゃないか。そうだ、雫を嫁になんて、そんな、そんなことあってたまるか」


「お父さん?気が早いのお父さんの方じゃない?」


「えっと、じゃあ俺、お邪魔しちゃおうかなー」


「あら、やったわね雫!」


「だから違うってば!」


「許さん!まだそんな、付き合うとか、雫にはまだ早い!」


「違うって言ってるでしょ!」



夜の道を、四人で並んで帰った。



家に帰ってから、晩ご飯を食べて、お風呂に入って。


両親と、ちゃんと話をした。


弟が生まれてきて、私がいらなくなるんじゃないかって思ってたこと。


本当はずっと、怖かったこと。


また捨てられるんじゃないかって不安になって、家に帰りづらくなっていったこと。



全部ちゃんと話したら、また両親が私のことを抱きしめてくれた。


「雫は私たちの大事な娘よ。血のつながりがなんだって言うのよ。そんなものより、私たちはもっと強い絆があるわ。弟が生まれてきたからって、それは変わらないのよ」


「当たり前だ。雫は俺たちの家族だ」



また、わんわん泣いた。


今までずっと言えなかったこと、苦しかったことが、あふれ出てきて、止まらなくて。


両親の腕の中で、泣き続けた。





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