月夜に花が咲く頃に
そこからは、あまり記憶がない。



いつの間にか息を切らしたお父さんがいて、いつの間にかお母さんの葬式が淡々と終わっていった。



後からお父さんと二人で警察の話を聞いた。



お母さんが助けた子供は、ちょうど私と同じくらいの歳の女の子だったらしい。



お父さんは悲しそうに笑いながら、お母さんのことだから、きっと放っとけなかったんだな、と涙を流した。



そういえば、お母さんが助けたという女の子の家族も葬式に来ていた。



私とお父さんに、その女の子とお母さんはすごく申し訳なさそうに頭を下げて、お母さんに手を合わせて帰って行った。



・・・・・・恨む気になんて、なれなかった。



何も、感情がわいてこなかった。





そして数週間後。



お母さんの後を追うように、お父さんが死んだ。



母を失った悲しみと、精神的な疲労、そして、これから私と陽向を一人で育てなければというプレッシャー。


なんとか一人で家族を守ろうと、家のことも仕事も、背負いすぎた。


精神的にも肉体的にも疲れ切った父親は、仕事中に倒れてそのまま息を引き取った。




どうして、こうなった?



幸せだった。



あんなに、幸せだったのに。



< 163 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop