月夜に花が咲く頃に
涙すら出てこない。


無気力のまま、無表情のまま、私の日常はすぎていった。



私と陽向を引き取ってくれた親戚の人も、私を気味悪がるほど。



ただ、陽向はなぜか私のそばを離れなかった。



「う?だあー」



無邪気な丸い瞳が私を映す。



「・・・・・・どうしたの」



陽向の頭を撫でる。



ねえ、あんた、分かってる?



あんたの親、死んじゃったんだよ。



もう会えないんだよ。



どうしてあの二人が死んじゃったんだろう。



「私が死ねばよかったのに」



そうすれば、陽向はあの優しい両親に育てられながら、きっと幸せに暮らせたんだ。



陽向、ごめん。



死んだのが私じゃなくて、ごめん。



「おい、バカのこと言ってんじゃねえぞ」



後ろから声がして振り向くと、そこには怖い顔をしたヒロ兄が立っていた。



「ヒロ兄・・・・・・」



ヒロ兄は私たちが親戚に引き取られた後も、ちょくちょく会いに来てくれていた。



でも、前みたいに遊ぶ気にもなれなくて、私はヒロ兄をなんとなく避けていた。



だから、まともに話すのは母親が死んで以来だ。



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