月夜に花が咲く頃に
「お前だって、家族なんだよ。だから、そんな悲しいこと言うんじゃねえ」



涙が、溢れた。



お母さんとお父さんが死んでから、初めて泣いた。



陽向が不思議そうに私を見る。



じたばたと手を動かして、私の頬をぺちぺちと叩く。



その手はちょっと痛くて、でも柔らかくて、小さくて。



涙を拭ってくれてるみたいで、余計に涙が止まらなかった。



「しっかりしろ。お前は陽向の姉貴なんだ。陽向を守れるのは、お前なんだぞ」



この小さな手を。



心から愛したあの二人が残してくれた私の家族を。



守りたい。



私が、守るんだ。




「ヒロ兄、私、強くなる」



涙を拭いて、ヒロ兄を真っ直ぐ見据える。



ヒロ兄はニカッと笑って、私の頭を撫でた。



「それでこそ、俺の弟子だな!」


「えー?いつから私、ヒロ兄の弟子になったのさ」


「いいんだよ、妹分みたいなもんなんだから。弟子と変わらねえだろ?」


変わらない、か?


「だから、雫のことは俺が守ってやる」


急な弟子発言にびっくりしたけど、でも。



ヒロ兄はやっぱり優しくて、頼りがいがあって。



あの初めて会った時と、同じ。



苦しいとき、しんどいとき。



いつだって、闇から私を引っ張り出してくれた。




ヒーローみたいな人だった。






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