月夜に花が咲く頃に
けど、俺は分かってなかった。



楽しさばかりに気を取られて、俺がいる世界の危険さを、ちゃんと理解していなかった。



暴走族の、抗争。



俺は、その時は大規模な喧嘩としか思ってなくて。



俺のそんな軽い考えと、軽率な行動が。



あの悲劇を起こしたんだ。




暁と、その当時敵対していた“(いちい)”。



俺が中学2年の夏、二つの暴走族の抗争が起こった。



櫟は総長がどっかの組の関係者と言われていて、目的のためならどんな手でも使う卑怯な族だった。



そんな卑怯な族に、暁は負けない。



意気込んでいた俺に、浩さんは言ったんだ。



「気をつけろ。櫟は強い」


「強いって・・・・・・、卑怯なだけじゃねえか。そんなの強いなんて、俺は認めない」



・・・・・・本当に、馬鹿だった。



浩さんは、ずっと俺に教えてくれていたのに。



“強さは一つじゃない”



その意味を、俺はその時まだちゃんと分かっていなかった。






「紅雅!先走るな!」



抗争中。



俺は卑怯な手を次々使ってくる櫟が許せなくて、暴走していた。



先に決めていた作戦も忘れて、一人で暴れ続けた。



・・・・・・それが、いけなかった。




「紅雅!!!」







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