月夜に花が咲く頃に
それから総長を失った俺たちは、一時撤退。



浩さんを急いで病院に運んだが、意識不明の重体のまま、目を開けることはなかった。



俺は浩さんが眠るベッドの横から、しばらく動けずにいるまま、一ヶ月がたった。



「紅雅、いい加減そこから動け。みんな心配している」



「そうだよ。暁の倉庫に来いよ」



暁の仲間は、こんな俺でも心配してくれている。



だけど、でも。



浩さんをこんな状態にしたのは俺だ。



そんな俺が、どんな顔して暁のあの居場所に戻ればいい。



俺が暁にいる資格なんて、もうないんじゃないのか。



「・・・・・・俺は、暁には戻れねえ」



力なくそう言うと、いきなり殴られて吹っ飛ばされた。



「いい加減目ぇ覚ませ馬鹿野郎」



俺を殴ったのは、当時副総長だった浩さんの親友の松さんだった。



「来い、紅雅」



俺は松さんに引きづられるように、暁の倉庫へ連れて行かれた。




暁の倉庫には、みんな揃っていて。



松さんが俺を連れて倉庫に入ると、場が静まりかえった。



「よく聞けお前ら。今日で、俺たち幹部は引退だ」



松さんの突然の言葉に、俺は驚いて松さんを見た。



「引き継ぎだ。紅雅」



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