月夜に花が咲く頃に
「えー、俺送っていきたいー」


「光、俺まだ京極さんと話したいことあるから。ね?」


奥山のブラックスマイルに明原が勝てるはずもなく。


結局、奥山に送ってもらうことになった。



車に乗ると、ガクさんがぺこりと軽く会釈してくれた。


やっぱり見た目ごついけど、礼儀正しい人だなあ。


今日会った暁の人たちの中で一番好感持てるよ。


「家まで送るよ。どこらへん?」


「あ、いや、近くにコンビニあるからそこまででいいよ。〇〇町のコンビニって言って分かるかな」


奥山の気遣いはありがたいけど、あんたに家知られたらなんか怖いんだよ。


「そう?じゃあガク、そこまでお願い」


「はい」


車が静かに動き出す。


すでに外は真っ暗で、繁華街のネオンが光ってる。


「遠くから見たら綺麗だよね、この街」


「・・・・・・うん」


でも、あのネオンの下で、何人がまた泣いてるんだろう。


何人が傷ついてるんだろう。


綺麗な街だなんてほど遠い。


嘘と血にまみれた、汚い街だ。


それを隠すように、残酷なくらいまぶしいネオンが、憎たらしいくらいだ。


「あのネオンの下は、酷い有様なのにね」


「・・・・・・え?」






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