月夜に花が咲く頃に
後ろから肩を掴まれて、私は半ば無理やり振り向かされた。



「言いたいこと、あんだろ」



嫌だ。



「言っただろ。隠すな」



やめて。



「我慢するな」



やめて・・・・・・。



「全部吐き出せ」



「やめて!」



耳を塞いで、しゃがみ込んだ。



どうして吐き出させようとするの。



私は一刻も早く、この気持ち悪い感情を消し去ってしまいたいのに。



なんで消させてくれないの。



「・・・・・・これは、ただの俺のエゴかもしれない」


「は・・・・・・?」


「お前に責められることで、楽になりたい。多分、少なからず俺はそう思ってる」


「何、それ・・・・・・。そんなの、自分勝手だよ、」


「ああ。ほんとに最低だ」


「・・・・・・っ」


「でも、ここでお前が今の感情を押し殺したとしても、この先絶対後悔する。これから先、何か言いたいこととかぶつけたいことがあっても、この先お前は何も言わずに自分の感情を押し殺し続ける」


「勝手に、決めないでよ、」


「一度それに慣れちまうと、人はそれを繰り返す。それが楽だと思い込んで、そこから身動きがとれなくなる」



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