月夜に花が咲く頃に
「俺もー!俺も雫と一緒にいてえよ?」



急に出てきた光が後ろからのしかかってきた。



いつからいたんだこいつ。



「ちょっと、光離してよ」


「だって最近雫俺と全然遊んでくれねえんだもん」


「だからってこんなひっつく必要ないでしょうが!」


「俺は俺がしたいように動く!」


「あはは、光は馬鹿だなあ」


「おい!」



なんなんだ、ほんとに。



人が真剣に悩んでるっていうのに、一人になりたいって言ってんのに。



どこまでも優しいこいつらは、時に残酷だ。



「雫」



「・・・・・・紅雅」



いつの間にか紅雅もいて。



一瞬逃げたい気持ちに襲われたけど、紅雅の顔を見たらその気も失せてしまった。






本当は、分からないふりをしていただけだった。



ぐちゃぐちゃになった感情のせいにしたいだけだった。



紅雅に対するごちゃまぜになった感情なんて、ほとんどもう落ち着いてた。




ただ、ヒロ兄がいなくなってしまうことに、酷く悲しい気持ちだけ。








・・・・・・全部、分かっていたんだ。





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