月夜に花が咲く頃に
「どうせ私は、恋愛経験なんて皆無ですよ」



もう半分やけくそになって頬を膨らませて紅雅を見ると、紅雅はちょっと驚いた顔をして、その後優しく笑った。



「ふ、変な顔」



あ、この表情は、好きだ。



紅雅は笑って私の頬を両手で包む。


そのまま目を合わされて、私の心臓はドクン、と跳ね上がった。



し、心臓に悪い。


紅雅の顔を至近距離ってのは、とてつもなく心臓に悪い。



これが、モテる男の破壊力ってやつか。



「く、紅雅、ちょっと、ギブ」


「あ?何が」


「~~~っ、顔、近い、」



ついに耐えきれなくなって、ぎゅうっと目をつむる。


しばらくしたら、紅雅の手が私の頬から離れた。



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