月夜に花が咲く頃に
「お前、まじで分かんねえのか」


「え、何が?」


「・・・・・・」



いや、そんな呆れ顔でため息つかれても。



「もうちょっと分かりやすく言ってよ!大体紅雅は言葉が足りなすぎるんだよ」



口を尖らせて抗議すると、紅雅は眉間に皺を作った。



「・・・・・・言葉が足りねえか?」



怒られる?と思ったら、ちょっぴり頼りなさげな声が隣から聞こえて。


もしかして、自分の非を認めた、の?


そんな考えがふと頭によぎって、私は少しだけ、調子に乗ってしまった。



「そうそう!いつも必要最低限なことしか言わないし、表情も読み取りづらいし。伝えたいことがあるならもっと分かりやすく率直に伝えるべきだよ」



・・・・・・それが、いけなかったんだと思う。



「ふーん?」



「え、ひゃっ」



急に強い力で体を引っ張られて、そのまま後ろに倒される。



突然のことに頭はついていかず、ただ目の前には紅雅の真面目な顔があって。



視線が交わった瞬間に、顔が熱くなった。




「く、くうがっ、」


「そこまで言うなら容赦しねえぞ」


「な、にが、」


「お前にも分かりやすく言ってやるよ」



いつもの無表情とも、不敵な笑みでもない、真剣な紅雅の表情に、私の身体はこわばって動かない。



紅雅の唇が再び開き、私は紅雅の言葉を待つしかなかった。



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