月夜に花が咲く頃に
「・・・・・・俺は、」


――――ピリリリリリ



・・・・・・・・・・・・へ、?



紅雅が言いかけた言葉を、場違いな音が遮る。



紅雅と顔を見合わせて、数秒後に紅雅は大人しく私の上から避けた。



な、なんか、申し訳ない。



「ご、ごめん」



謝る意味はよく分からないが、とりあえず謝って、私はポケットの中で震えるスマホを取りだした。



「も、もしもし」


『あ、もしもし、雫ちゃん?ごめんねえ急に。叔母の香奈恵です』


「か、香奈恵さん!いつも陽向がお世話になってます」



香奈恵さんっていうのは、私の両親が死んだ後に私と陽向を引き取ってくれた人。


母の妹に当たる人だ。


今も陽向は香奈恵さんの家で暮らしている。



「それで、どうしたんですか?」


『あのね、陽向君がお姉ちゃんのところに行きたいって、雫ちゃんの住んでるところに今向かってるのよ。一人じゃ心配だから私も一緒に行こうとしたんだけど、一人で行くんだって聞かなくて・・・・・・』


「え、陽向が一人で!?」


『急だから雫ちゃんにも迷惑かけちゃうと思ったんだけど・・・・・・。やっぱりお姉ちゃんが大好きみたいで。幼稚園は雫ちゃんの家からでも通える距離だし、しばらく雫ちゃんにお願いしてもいいかしら?』


「そ、それはかまいませんが・・・・・・。むしろ、すみません、陽向がわがままを言ってしまって」


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