月夜に花が咲く頃に
『あら!そんなことはいいのよ。雫ちゃんだって、もっと頼ってちょうだいな。あなたは私の大事な姪っ子なんだから』


「香奈恵さん・・・・・・」


『じゃあ、何かあったら連絡ちょうだいね!陽向君のこと、お願いね~』



その言葉を最後に電話は切れた。



香奈恵さん・・・・・・。相変わらず大らかな人だ。



「・・・・・・電話、終わったのか」


「あ、うん。・・・・・・って、そうだ!陽向のこと探さなきゃ!」



陽向は私が一人暮らしを始めた頃に一度家に来たことはあるけど・・・・・・。


どこかで迷子になってる可能性は、限りなく高い。


陽向はまだ六歳になったばかりだ。



「紅雅、ごめん。弟が私に会いに来てるみたいで、一回家に帰りたいんだけど・・・・・・」


「・・・・・・ああ。送る」



紅雅はいつも通りの無表情で車の手配をしてくれた。



・・・・・・さっきの話も、気になるけど。



とりあえず、今は陽向が優先だな。



私はガクが運転する車に乗り込んで、家へと急いだ。








「・・・・・・って、なんであんたらまでついてきたのよ」



「えー、だって、雫の弟、俺も会ってみてえもん」


「・・・・・・」



紅雅に至っては無視ですか。



なぜか車の中には、紅雅と光もいて。


ガクも苦笑しているのがミラー越しに見える。



「姐さんはほんと愛されてますね」


「ガク、何言ってんの。絶対違う」



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