月夜に花が咲く頃に
どうせ光は面白そうだから、とかって理由だろうし、紅雅だって暇だったから、とか言いそうだ。


こちとら自分の弟が迷子になってないかとか事故に遭ってないかとか心配で気が気じゃないのに。


もういいや、この二人は無視だ無視。



車の窓を開けて、キョロキョロと辺りを見回す。


そしたら、見覚えのあるリュックが道ばたに丸まってるのが見えた。



「ちょ、ガク!止まって!」


「は、はいっす!」



車が止まったか止まってないかくらいでドアを開けて走り出す。



「陽向!」



丸まってるそのリュックに向かって叫ぶと、リュックがもぞ、と動いてその影からひょこ、と泣きっ面が顔を出した。



半年ぶりくらいに見るその顔は、まったく変わってなくて。



無事見つけられた安堵感と、久々に会えた嬉しさに顔がほころぶ。



「姉ちゃん!」



陽向は私に気づいて、リュックをガチャガチャ鳴らして駆け寄ってきた。



「もう、香奈恵さん困らせちゃダメでしょ?」


「だって俺、姉ちゃんに会いたかったんだもん」



こういうこと言うから怒りづらいんだよなあ。


へへっ、と笑う陽向の頭を、くしゃりと撫でる。


すると私の後ろからひょい、と光が顔を出した。


< 201 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop