月夜に花が咲く頃に
「お、こいつが雫の弟?」


「な、なんだお前!姉ちゃんに近づくな!」


「おーおー、元気が良いガキだな。嫌いじゃねえぞ!」


「うるせえ!ガキ扱いすんな!」



いつからそこにいたのよ。



車から紅雅も降りてきて、陽向は余計に警戒したのか、私を背にして両手を広げた。



「お、俺は姉ちゃんの弟の京極陽向(きょうごくひなた)だ!お前らみたいなやつに、姉ちゃんは渡さねえぞ!俺が姉ちゃんを守るんだ!」



・・・・・・なんか、勘違いしてるみたいだ。



「・・・・・・面白えじゃねえか」


「陽向ってのか!お前、男だなー!気に入ったぜ!」


「なっ、何だお前ら、馴れ馴れしくすんなよな!」



いや、あんたたちも少しは誤解を解こうとしなさいよ。



まったくしょうがないなあ。



「陽向、大丈夫だよ。この人たちは、私の仲間だから」


「?姉ちゃんの敵じゃないの?」


「違う違う。むしろ味方」



陽向は私を見上げてこてん、と首をかしげる。



ああ、可愛い、私の弟。



「はは、お前、面白えな!なあ、こいつも暁の倉庫連れて行こうぜ!」


「はあ?何言って・・・・・・」


「倉庫って?」


「俺たちのアジトみてえなもんだ」


「アジト!?すげえ!」



光の言葉に、キラキラと陽向は目を輝かせる。


ああ、もうこれは止めるのは無理そうだ。



こうして、私の弟は幼稚園児にして暴走族の溜まり場デビューを果たしたのだった。



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