月夜に花が咲く頃に
廊下に出てずるずるとしゃがみ込む。



「ほんと、もう無理・・・・・・」



長いため息をついて、熱くなった顔を両手で覆う。



紅雅が悪いんだよ。


そもそもあいつは距離感がおかしい!


いつも勝手に近づいて、勝手に触って・・・・・・。




勝手に、人の心かき乱して。





「姉ちゃん!」



幹部室のドアの前でしばらくうずくまっていると、陽向の声が聞こえて頭を上げる。



「どうしたの?もしかして、お腹痛い!?」


「へ?あ、大丈夫大丈夫!ちょっと、ね、眠くなっちゃって!もう元気だよー!」


「ほんと?」


「ほんとほんと!それより、陽向もう遊ばなくていいの?」


「んー、お腹すいたー」



外をふと見ればもう空が暗くなりかけてる。


そっか、もうそんな時間だったんだ。



「じゃあ、おうち帰ろうか。今日は陽向が好きなものいっぱい作ってあげる!」


「ほんとー!?やったー!」



いけないいけない。


紅雅のことで悩んでる場合じゃない。


陽向にまで心配かけちゃいけない。



私が、陽向を守らなければならないんだから。



気を、引き締めなくちゃ・・・・・・!




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