月夜に花が咲く頃に
弟を暴走族に預ける姉もどうなんだ、なんて世間様からしたら思われるんだろうけど。



私からしたら、陽向を預けるならここが一番安心だと思ってしまうからな。



なんと言われようと、ここが私の信頼できる居場所。



少し心が温かくなって、自然と笑みがこぼれた。







「じゃあ、京極さん。この資料、全校生徒分、よろしくね」


「先生、この資料って・・・・・・」


「ああ、一ヶ月後の中間テストの資料だ」



先生に渡されたのは大量のプリントとホチキス。


プリントには『中間テスト範囲表』と書かれている。



「・・・・・・これ、生徒が見ていいんですか?」


「いいだろ。明日どうせ皆に配るんだし。あ、これ束ごとに学年分けられてるから、混ざらねえように注意しろよ。じゃ、あとはよろしく」


「え、ちょっと、一人でやるの!?」



そそくさと教室を出て行こうとする担任を呼び止めようとしたけど、それは敵わず。


逃げるようにさっさと行ってしまった。



全校生徒分って、どんだけよ・・・・・・。


やっぱりここの先生はどうかしている。



しょうがない、さっさと終わらせちゃおう。



プリントを重ねて、揃えて、ホチキスで留めていく。



外からはグラウンドで部活している人たちの声が聞こえてくる。



そういえば、放課後にこうやって静かな教室に一人残るなんて、初めてかもしれない。


そもそも、放課後になったらすぐ帰ってたし。




< 209 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop