月夜に花が咲く頃に
「姉ちゃんはさ、いっつも俺の前では、笑ってるけどさ。俺知ってんだ。姉ちゃんは、ずっと我慢してんだ」


「・・・・・・そうか」


「ヒロ兄が死んじゃったときだって、絶対姉ちゃん泣いてただろ?俺も、電話で聞いたとき泣いちゃったけど・・・・・・。あの時だって、姉ちゃん電話の向こうで絶対我慢してた。なあ、姉ちゃん、泣いてただろ?」


「・・・・・・さあな」


「でもさ、俺ずっと前に、ヒロ兄から言われたんだ。俺がもっと大きくなったら、姉ちゃんのこと守れる男になれよって。姉ちゃんのこと大好きなら、姉ちゃんを守れる強い男になるんだぞって」


「・・・・・・ああ」


「俺、早く強くなりてえのに・・・・・・。姉ちゃんが安心できるくらい、姉ちゃんが俺を頼ってくれるくらい、強くなりてえのに・・・・・・。俺はいっつも甘えてばっかりだし、頼ってばっかりだし・・・・・・。こっちに来るときだって、1人でも大丈夫だって証明したくてひとりで来たのに、結局迷っちゃうし・・・・・・。俺、姉ちゃんにいっつも助けてもらってばっかり。・・・・・・俺って、もしかして姉ちゃんの負担でしかねえのかな」



陽向の口からこぼれるものは、全部初めて聞くことばっかりで。



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