月夜に花が咲く頃に
そんなわけないって、今すぐに飛び出して否定したかったけど、紅雅の言葉に足を止めた。



「・・・・・・確かに、あいつはお前を守ろうと必死だよ。でもそれは、負担とはちげえ」


「え・・・・・・?」


「あいつが今笑ってられんのは、お前がいるからだろ」


「俺・・・・・・?」


「お前はあいつにとって、必要だよ」



いつも口数が少なくて、無愛想で。



何考えてるか分からないくせに。



紅雅は、いつも、大事なことは、伝えてくれる。



・・・・・・でもね?



「そういうことは、本人から言わせてよ、バカ」



私が姿を現すと、陽向はすごくびっくりした表情で。


紅雅は知っていたかのように素知らぬ顔をする。



「陽向」



紅雅は無視して陽向を見ると、陽向はばつが悪そうな顔をして俯いた。



「ちゃんと顔上げなさい」



陽向の前にしゃがみ込んで、顔を上げさせる。



その顔を見たら途端に安心して、涙があふれ出した。



「ばかだなあ、陽向は・・・・・・っ」



そのまま抱きしめると、陽向はびっくりしたみたいで、でも、次の瞬間には、私に抱きついて。



「ご、めん、な、さっ、うわああああああん」




大声で泣いて、泣きわめいて。



安心したのか、そのまま眠りについてしまった。





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