月夜に花が咲く頃に
「こんなもの振り回してちゃあ危ないでしょ、兄ちゃん達」


もうだめかと思ったのに。


鉄パイプは私に振り下ろされることなく止まっていて。


目の前には、あのチャラ男の背中。


さらさら金髪がまぶしくて、目を細めた。


「雫ちゃーん、何やってんだよ」


振り返って笑う明原は、それでもなぜか怒ってるみたいで。


掴んで止めたであろう鉄パイプを思いっきり投げ飛ばした。


「とりあえず、雫ちゃんは休んでなね」


そう言って、明原は残りの男達を次々と倒していった。


よく見ると、明原だけじゃない。


後ろにはすでに女の子を逃がした奥山。


その表情は、笑っていたけど、すごく悲しげで。


「来るの遅くなって、ごめんね」


なんで奥山が謝るんだろうか。


「なんで、あんたたちが、」


不意に足に力が入らなくなって、バランスを崩した。


倒れそうになった私を、大きな手が支えた。


「っ、鬼神・・・・・・」


いつの間にか隣にいたらしい。


鬼神はしばらく無言で私を見つめてから、小さくため息をついた。


「帰るぞ」


・・・・・・え?


鬼神はそれだけ言って、私をひょい、と抱き上げると颯爽と歩く。


奥山と、いつの間にか男達を全員倒した明原も、当然のようにその後ろに着いてきた。


いや、帰るって、何で私まで連れて行くの。


「ちょっと待って、何で私までまたあんたたちと、」








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