月夜に花が咲く頃に
「ごめん、別に君がヨルだからって危害を加えるつもりはないんだよ。君にも、君の周りにもね」


奥山の言葉に、首をかしげる。


ヨルの正体を暴きたい人なんて、その理由はたかが知れている。


ヨルを利用したい人、ヨルを倒したい人。


なんにせよ、ろくな目的じゃない。


今まで、幾度となく見てきたんだ。


だから、今までばれないように、親友にだって秘密にしてきた。


巻き込みたくもないから。


なのに、この目の前の人たちは、一体どういうつもりなのだろうか。


「訳が分からないって感じかな。そうだよね。でも、ほんとに俺たちは君に悪意を持って接触したわけじゃないんだ」


奥山はそう言って、鬼神に視線を投げかけた。


「昼間も言ったと思うけど、紅雅が君をずっと探していたんだよ」


「なんの、ために、」


「んー、それは本人に直接聞いた方がいいかもね。ねえ、紅雅」


鬼神は何も言わずに立ち上がった。


無言で私の前まで来ると、ひょい、とまた私を抱き上げる。


「ちょっと!?」


「寝る」


またそれかい!


って何で私を連れてくのさ!


奥山と明原に助けを求めようとするけど、二人はただ笑って見送るだけで。


私は鬼神にされるがまま。


やがて鬼神は一つの部屋の中に入り、私を静かにベッドの上に下ろした。





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