月夜に花が咲く頃に

｢ねえ、来たよ！暁(あかつき)の人たち！｣


一人の女子の声に、みんなが一斉に廊下の方へと走っていく。


しばらくしてから、廊下が黄色い悲鳴と野太い声の挨拶で耳が痛くなるほどの歓声に包まれた。


｢はあー、毎度毎度よくやるねえ｣


翼の呆れたようなため息に、私も頷く。


まあ、無理もないか。


彼らは、ここら一帯を牛耳る暴走族、"暁"だ。


普段は学校に来ないか、来たとしても教室になんて来ないから、今日はいわゆるレアな日。


今日みたいにたまに教室の近くまで来るときは、みんな大騒ぎだ。




いつもそこら中の女子に愛想振りまいて、女関係の噂が絶えないチャラ男。


金髪頭がキラキラまぶしい、明原光(あきばらひかる)。




優しく穏やかな雰囲気で、一見不良とは思えないけど、まさかの赤髪。


いつもにこにこ笑ってる、奥山楓(おくやまかえで)。




そして。


有無を言わさぬ、冷徹な赤い瞳。表情一つ変えることなく、その襟足の長い黒髪を揺らして颯爽と歩く。


暁の頭、鬼神紅雅(おにがみくうが)。



そんな最強な三人が、この高校にいるのだから。


彼らはみんな1年生だけど、もはや彼らに逆らう人なんて、3年ですら1人もいない。




"圧倒的強さ"





そんな言葉がぴったりだ。