月夜に花が咲く頃に

なんか、あったかい。


このままずっと包まれていたいような、不思議な感覚。


離れがたくて、何かに抱きつく。


ん?でも意外と硬い・・・・・・。


でもあったかいなあ。


もう少し、このままで・・・・・・。


「朝からずいぶん積極的だな」


不意に頭上から聞こえたフェロモン全開の低い声に、ん?と目を開ける。


上を見上げれば、不敵に笑う鬼神と目が合って。


その時にようやく自分の今の状況を理解した。


「っ!」


すぐに離れようとするけど、背中に回ってる鬼神の腕がそれを許さない。


「ちょっと、離してよ」


「お前から抱きついてきたんだろ」


「それは!寝ぼけてたの!」


誤解だと訴えても、この男が聞いてくれるはずもなく。


髪に顔を埋めたり、首の後ろあたりをくすぐったりしてくる。


私は犬じゃないんだぞ。


でも、その仕草全部が優しくて。


なかなか居心地がいいから、離れるに離れられない。


魔性の男だ。


「傷、痛くねえか」


ほら。こんな心配してくるあたりも。


「・・・・・・ん」


ずるいよなあほんと。




・・・・・・って、何やってんだ私は!


慌てて鬼神の腕をどけて、起き上がる。


いや昨日は疲れてそのまま寝ちゃったけど。







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