月夜に花が咲く頃に
「あ!雫!ごめん、なんか他の衣装もあるみたいで、まだしばらく教室戻れないかも」


「あ、そうなんだ。衣装係、張り切ってるね」


なんというか、さっきも思ったけどすごいクオリティ。


文化祭のレベルじゃないぞ。


「なんか雫の衣装もかなり作ってるみたいだったよ!まだ完成してないらしいけど・・・・・・」


「私の衣装?」


「うん。なんか納得いくまで作り直してるっぽい」


・・・・・・そんなにか。


なんか着て似合わなかったら申し訳なさ過ぎるぞそれは。


「そ、そっか。じゃあとりあえず私は看板やってるね」


「うん!がんばってー!」


ばいばい、と手を振ったあとも翼は衣装係の子から呼ばれてて、あれは相当時間がかかりそうだ。


看板は一人で頑張るか。


私は再び教室に戻って、看板づくりを再開した。


黙々と無言で作業していく。


ずっと同じ姿勢で作業してるから、身体のあちこちが痛くなってきた。


ペンキの筆を一旦置いて少し休憩していると、不意に頬に冷たい何かが当てられた。


「冷たっ」


びっくりして振り返ると、そこにはペットボトルを私に差し出す鬼神がいて。


この前の出来事を思い出して、慌てて顔を逸らした。


実は、あのキス事件以来鬼神とはまともに話していない。


というか、私が避けている状態が続いている。


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