月夜に花が咲く頃に
「期待したのか?」


「違うわ、バカ!」


やっぱりこいつはバカだ。危険人物だ。


このペットボトルもなんか仕組んでんじゃないのか?


「まあ、この前はやりすぎた」


ペットボトルとにらめっこしている私の耳に、思いもよらない言葉が飛び込んできた。


「ほえ?」


「だから、いい加減避けんのやめろ」


それだけ言って、鬼神は教室の外に行ってしまった。


なんだ?あいつ。


もしかして、私に避けられて少しは反省してくれたのか?


さっきのちょっとだけしゅんとした鬼神の顔を思い出す。


寂しかった、のかな。


そう考えると、鬼神がちょっとかわいく見えてくる。


あいつ、一見無表情だけど、よく見るとけっこう顔に出るんだよな。


「ふふっ」


思わず笑ってしまう。


このペットボトルも、お詫びの品だったのかも。


そう考えると、なんだかペットボトルも愛しく思えて。


一口飲んでから、気合いを入れ直す。


よし、もうひと頑張りしようっと。



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